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荒井武彦講師が小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトで活躍しています

6月27日(水)日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着しました。本学システム情報分野の荒井武彦講師はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の元研究員で「はやぶさ2」の開発段階からプロジェクトに携わっています。「はやぶさ2」探査機はこれから1年半の間、遠隔観測やロボット探査、サンプル採種などを行い、2020年に地球にサンプルを持ち帰る予定です。以下、荒井講師へのインタビューです。

Q.(聞き手): JAXAの元研究員ということですが、どんな開発に携わっていましたか?
A.(荒井講師): 私は「はやぶさ2」プロジェクトのサイエンスチームに所属しておりまして、科学観測機器である中間赤外カメラ(TIR)と近赤外分光計(NIRS3)の開発に携わっておりました。製造はメーカーさん(NIRS3は群馬県伊勢崎市にある明星電気さんで開発され、何度も試験に伺いました)が担当されており、私は所定の性能に達しているか、科学目標を達成できるか、機器の性能評価試験を何度も行いました。

Q.(聞き手):「はやぶさ2」が小惑星リュウグウを探査するとどんなことがわかりますか?
A.(荒井講師):小惑星は大気や地殻の変動がなく、太陽系誕生初期の情報を保存していると考えられております。特に注目しているのは水(H2O)で、リュウグウのような始源的な天体には重量比で比較すると地球よりも多めに水が存在することが予想されています。むしろ地球に水が少ないことが問題で、最初あった水がどこにいったか、逆に後から供給された場合どんなメカニズムか、複数のモデルが提案されております。「はやぶさ2」の探査では地球の水の起源の解明に比較惑星学の観点から迫る予定で、NIRS3は水を検出する装置として注目されている科学観測の一つです。

Q.(聞き手):今後どんな観測を行う予定ですか?
A.(荒井講師):NIRS3の他に、私はTIRでリュウグウのサーモグラフィーを取得します。下の画像はTIRが6月30日に撮像したリュウグウの画像で、1自転分の画像をGIFアニメにしました。表層の温度を連続して撮影することによって、温度変化から表層の熱物性や物理特性を明らかにします。近年、地球に落ちてきた隕石の中に生命の素となる有機化合物が発見されており、リュウグウにもあれば大きな発見になります。TIRは表層の温度を観測するので、いつも温度が低くて有機物が分解されていなさそうな地域の発見に役にたちます。「はやぶさ2」はサンプル採取で地表に少しだけ着陸しますが、TIRは機器にダメージを与えない、温度が高すぎない着陸地点の決定でも活躍します。NIRS3もTIRも非常に順調で今後1年半の間にリュウグウのいろいろな角度や近傍からの観測を行って、その真の姿を明らかにしてゆきます。ご期待ください。


小惑星探査機「はやぶさ」の模型を持ってインタビューに答える荒井講師。

2018年6月30日に中間赤外カメラTIRで取得した小惑星リュウグウのサーモグラフィー。日照域の観測で、色(温度に変換する前の観測量の値)は赤い色ほど赤外放射が強い地域、青い色ほど弱い地域を表す。
提供:JAXA/ 足利大学 / 立教大学 / 千葉工業大学 / 会津大学 / 北海道教育大学 / 北海道北見北斗高校 / 産業技術総合研究所 / 国立環境研究所 / 東京大学 / ドイツ航空宇宙センター / マックスプランク研究所 / スターリング大学